Mio Fertility Clinic

不妊症原因を知るためには、検査はとても重要です。それぞれの検査は、お一人お一人のからだの調子により受けていただくかどうか、また、受けていただく時期なども異なります。重要なのは、その検査がなぜ必要かをご理解いただくことです。ご自分の体のことを把握するチャンスととらえ、治療を選択される判断材料にしていただければと考えています。原因を探す検査は、ご夫婦が平行して進められることが大切です。そして、その検査の目的、検査結果を十分にご理解の上、治療方針を検討しましょう。

女性の検査

基礎体温(BBT)

朝目覚めたときの体温を測定します。測定には、温度の変化を細かく測定できる婦人体温計を用います。月経開始後排卵までの卵胞期では、体温は比較的低温で低温相と呼ばれます。そして、排卵後黄体ホルモンが分泌されるようになるとこのホルモンの作用で体温は上昇します。この時期を高温相と呼びます。この高温相は2週間しか続かず妊娠が成立しなければ、体温が低下して月経が起こります。従って、高温相が2週間以上続けば妊娠している可能性が高くなります。不妊症の治療にはBBTの情報は不可欠です。必ず測定しましょう。

尿中LH測定(黄体化ホルモン)

卵胞が充分に発育した時に、脳下垂体から排卵をさせるために分泌されるホルモン。排卵の時期を決定するための最も簡単な検査です。

超音波断層法(スキャン)

産婦人科領域では最も大切な検査で、超音波(周波数3~7.5MHz)を体に当てて、その反射波をとらえて画像にするものです。液体は音波が反射しないため黒く抜けた像となり、卵巣内の卵胞も卵胞液という液体を溜めていることから極めて明瞭に観察できます。卵胞の発育、排卵、妊娠初期の診断などありとあらゆる診察に用いられます。産婦人科で用いる超音波断層法は、お腹の上から検査する方法(経腹法)と腟内から検査する方法(経腟法)の2種類があります。体外受精、顕微授精などのための採卵も、超音波断層法で卵胞を観察しながら腟から針を刺して行います。

※左へスワイプできます。

AMH(抗ミュラー管ホルモン検査)

抗ミュラー管ホルモン(AMH)とは、初潮をむかえ、卵巣内の原始卵胞が活発化し、発育していく途中の卵胞から分泌されるホルモンです。AMHの測定値と発育途中の卵胞の数は相関します。卵巣内の卵は年齢とともに減少していき、血液中のAMH濃度も減少していきます。ですから、AMH濃度を測定することは、卵巣の予備能を知るための指標となると考えられています。卵の数は、年齢とともに減少するのですが、卵巣内の原始卵胞がもともと少ない女性もいます。 AMH濃度が低い場合は、自然の排卵が起こりにくい、治療の際になかなか卵胞が発育しないというようなことが起こりやすくなります。

子宮卵管造影法(HSG)

卵管の疎通性や子宮内の形、さらに骨盤内の癒着の程度までを検査する目的で行われます。子宮内に造影剤を注入し造影剤の流れ、骨盤内に流出した造影剤の拡散の具合などをレントゲン撮影により細かく検討します。広く行われる検査ですが実施方法によっては検査時の痛みが強い場合があります。

腹腔鏡検査(Lap/dye)

女性の骨盤内の状態を直視下に観察し、子宮、卵管、卵巣などの妊娠に関わる臓器の異常の有無をチェックし、癒着や子宮内膜症が存在すれば、腹腔鏡下にて治療を同時に行います。女性側の不妊原因を探すための最も大切な検査です。また、この方法を用いてお腹を開けないで卵巣、卵管、子宮などの手術も行えます(腹腔鏡下手術)。海外ではこの検査(治療)を何よりも先に行います。

クラミジアIgG抗体測定

男性は尿道の細胞から、女性は子宮の入り口の細胞からクラミジア抗原を検出する方法が主ですが、この方法は実際の感染者の約20%程度しか陽性と判断できません。そこで、妊娠を希望される場合は、血液検査によるクラミジア抗体測定法による検査で正確な判定をする必要があります。

抗精子抗体

不妊女性の中には、体の中に精子が侵入してきたときその精子を病原菌などと同様に外敵と認識し、精子を攻撃して精子の運動性を無くしてしまう(殺してしまう)ような抗体ができている場合があります。この抗体を抗精子抗体(精子不動化抗体)と言います。一般に、この抗体を持っている不妊女性は3%程度あると考えられています。また、この抗体は不思議なことに男性にも存在することがあります。女性がこの抗体を持つと、女性の体液(血液、粘液、分泌液など)に精子が触れると精子は運動しなくなるため妊娠しなくなります。従って、この様なご夫婦に対しては、妊娠するために特別な工夫をした体外受精が絶対に必要となります。しかし、この様なご夫婦に対する体外受精の妊娠率は極めて高く、ほとんどのご夫婦で妊娠していただいています。

ご夫婦の検査

受精テスト

「不妊症の原因」で説明した受精障害を診断するための検査です。各種不妊検査にて異常を認めないにも関わらず、長期間妊娠しないご夫婦に対して行います。体外受精と同様に卵巣から成熟卵を採取し、ご主人の精子と共に試験管の中で培養し、卵と精子を理想的環境でお見合をさせ受精してくれるか否かを観察します。受精が確認できれば、受精卵は子宮に戻して妊娠の期待を持つことができます。また、受精しなければその後の治療法は顕微授精が必要となります。

風疹抗体価検査

抗体を持たない女性が妊娠20週ごろまで(特に12週ごろまで)に風疹に感染すると、おなかの赤ちゃんが風疹ウイルスの影響を受け、出生児が「先天性風疹症候群(CRS)」を発症する可能性があります。その影響は妊娠初期であるほど大きく、脳の発達障害、心臓奇形、眼球障害、難聴などが赤ちゃんの発育段階に応じて生じることが分かっています。CRSは風疹に対する抗体を持っている女性には起こりません。したがって妊娠の可能性のある女性、あるいは将来妊娠を希望している女性はその予防のために風疹抗体を保有する必要があります。そのためにはまず風疹抗体を保有しているかどうかの検査を行い、抗体がない、もしくは低抗体価の場合には風疹ワクチンの接種をおすすめしています。
※ワクチン接種後2か月間は妊娠を控えることを推奨しています。

着床前診断(PGT)について

当院は2018年12月8日付けで「日本産婦人科学会認定の着床前診断実施施設」に認定されています(鳥取県内では唯一)。

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不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)について

体外受精・胚移植を2回以上繰り返しても妊娠しない(反復ART不成功)方や妊娠するも流産を2回以上繰り返す(反復流産)方に対して、その主要原因である移植する胚の染色体の数的異常の有無が検査できるようになりました。形態良好な胚盤胞期まで発育した胚の一部の細胞を採取し、染色体数を検査し、その結果に応じて、胚移植するかどうかを決めます。これにより、移植あたりの妊娠率を高め、流産率を低下させることが期待できます。しかし、この方法には、ヒト生命倫理に抵触する可能性のある様々な問題も含まれており、その実施には慎重さが求められます。 当院は、PGT-A・SR実施施設としての日本産科婦人科学会の厳しい施設認定基準をクリアし、検査をご希望の方との十分な情報交換の上で実施できる体制を整えております。 ご参考までに、当院における胚年齢別のPGT-A結果(令和5年4月末現在)を表示しています。A判定(正常染色体数)および、B判定(染色体の一部に20%未満の数的異常を含む:低頻度モザイク)の胚が移植可能です。当院にて反復ART不成功、習慣流産にて着床前診断を希望された57名の患者(平均年齢40.1歳)においては、正常染色体数の胚は、形態良好胚盤胞に発育した胚でも16.4% (48/293)に過ぎず、妊娠でき、無事に発育し、元気な赤ちゃんになれる胚が本当に少ないことがわかります。 また、現在までに、正常染色体胚を移植した場合の臨床妊娠率は72.7%(24/33)、低頻度モザイク胚(正常な染色体の細胞と染色体異常のある細胞が混在すること)を移植した場合の臨床妊娠率は50.0%(3/6)です。

日本産科婦人科学会が、見解に基づいて医学的、社会的視点からPGT-A・SRの実施に必要な条件を満たし、希望する皆さまに寄り添ったPGT-A・SRの検査が実施できることを認定した施設の一覧です。PGT-A・SRを希望する皆さまが受診する施設を選択する際にご参照ください。 (公益社団法人 日本産科婦人科学会学会不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査に関する審査小委員会HP

不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-A・PGT-SR)について動画解説(公益法人日本産婦人科学会提供) 不妊症・不育症に関する着床前遺伝子異数性検査(PGT-A)の承認実施施設

(追記)重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)も鳥取大学医学部 附属病院遺伝子診療科と当院との連携で実施します。この検査は着床前診断検査項目の中で唯一県の助成金制度が対象となる検査です。 詳しくは鳥取県公式サイト/とりネット内に掲載されています。https://www.pref.tottori.lg.jp/241581.htm?qs=PGT-M

不育症検査

妊娠はするものの、流産や死産を2回以上繰り返す場合を指します。鳥取県は不育症に関する検査への助成金の制度を設けています。

男性の検査

精液検査と精液所見

通常、2日間程度の禁欲の後マスターベーションにて精液を自己採取していただきます。当院を含めて多くの施設では、男性の心理的負担を考慮した専用の採精室が用意されています。採取後の精液は30分間程度時間をおいて十分に液化した状態で、精子数や運動率を検査します。 自然な夫婦生活にて妊娠可能な精液所見の基準は、 精子濃度(1mlの精液中の精子の数):5000万以上、 精子運動率(全精子中の動いている精子の割合):50%以上です。 尚、精液所見は検査の度にかなり数値が変動します。基準の値を下回ったときは必ず再検査をし、普段の状態をより客観的に把握することが大切です。

ホルモン値測定

精巣内での精子を作る能力の程度を評価するために以前から行われている一般的検査で、血中LH、FSH、テストステロンの3種類のホルモンを測定します。