難治性不妊症例に対する新たな治療法(透明帯除去術)で世界初の妊娠出産例を得ました。
(2021年12月各メディアにて報道)

体外受精、顕微授精により、正常受精卵は得られるものの細胞分裂時に多くの細胞断片(フラグメント)が生じ、その後の受精卵発育が不良となり、胚盤胞に至らず胚移植や受精卵凍結ができず、治療に難渋する難治性不妊症例に対し、昨年、前核期における透明帯除去法という新たなアプローチにより、妊娠例が得られ(2020年4月16日)その後無事に出産された(2021年12月)症例についてご報告し、合わせて、その治療法について解説いたします。

この手法に至るまで

体外受精や顕微授精を行なった際、受精卵は得られるものの、その後の胚発育過程において、フラグメント(細胞の破片)が多量に発生し、形態不良になる場合(写真1)、これまで有効な対処方法はなく、治療を反復するのみで患者さんに大きな身体的、精神的、経済的負担を強いる結果となっていました。そのような状況下で、私たちは、2018年頃から卵子を取り囲む透明帯と卵細胞膜の繋がり(繊維状構造)がフラグメント発生の原因ではないかと考え、この点に着目した新たなアプローチ(透明帯除去術)を開始しました。

写真1 当院における初期分割不良を呈する症例

透明帯除去術とは

現在の生殖補助医療では、受精卵の発育過程がタイムラプス培養法にて常時観察できるようになっており、発育状況が克明に評価可能となりました。この培養法で受精卵の詳細な観察から、胚発育の不良の原因が、卵細胞膜と透明帯の間の癒着にあり、これは、受精卵を高張液に短時間浸すことで明瞭に観察でき、また、この癒着が繊維状構造物により生じていることが明らかとなりました。そこで、この繊維状構造物を除去するために、人為的に透明帯除去術を行い、その後の胚発育を観察しました。その結果、透明帯除去術を行った胚のその後の発育は、除去術を行わない胚に比して、明らかに形態良好胚に発育することを確認しました(写真2)。このことは、これまで良好胚盤胞が得られなかった治療困難な症例に明らかな妊娠の可能性を向上させることにつながっています。

写真2 高張液に入れ軽度収縮後に透明帯除去を実施した胚

透明帯除去術、その後の状況とこれから

透明帯除去術は、受精卵が得られるものの形態良好胚の得られない方(2021年2月時点:102名、平均年齢40.4才)に対して2020年1月以降実施してきましたが、その結果、本来、妊娠をほぼ期待できない方の約27%が妊娠されました(胚移植159周期、臨床妊娠28名)。このうち、すでに、3名の方が健児を出産され、本法の安全性についても立証されました。今回、透明帯除去術を行った患者さんと同様の状況に苦しんでおられる多くの方にとって、大きな希望の光となるべき画期的手法であると考え、今後さらに胚発育の状況も見極めながら本法の適応と考えられる方々に最大限の安全性と有効性に配慮しながら一人でも多くの方にお子さんの夢が叶いますよう治療を進めていきたいと考えております。

報告者:ミオ・ファティリティ・クリニック
生殖医療部チーフ 湯本啓太郎